シュヴァスマン・ヴァハマン彗星(29P/Schwassmann-Wachmann)の変化を観測

シュヴァスマン・ヴァハマン彗星(29P)を、2021年10月6日から1週間以上にわたって、むりかぶし望遠鏡で観測しました。この期間はアウトバースト(急増光)の 最中で、彗星が徐々に形を変えていく様子を捉えることができました。

2021年10月6日から10月14日の間のシュヴァスマン・ヴァハマン彗星(29P)の変化(3色擬似カラー合成画像、日付は協定世界時であるUTCに合わせている)。核の周りには細長い尾のような構造がある(矢印の先)。また、時間とともに彗星全体の構造が広がっている様子がわかる。画像の詳細はこちら

シュヴァスマン・ヴァハマン彗星(29P※1)は木星軌道の少し外側を周回する彗星で、その周期はおよそ15年です。この彗星は頻繁にアウトバーストを起こし、その前後で100倍以上明るくなる場合があることが知られています。2021年8-9月にもアウトバーストが発生し、10月からむりかぶし望遠鏡で1週間以上観測しました。むりかぶし望遠鏡にはMITSuME(ミツメ)という3色(緑、赤、近赤外)を同時に撮影できる観測用カメラが搭載されており、様々な天体の性質を多角的に調べることが可能です。彗星の正体は氷と塵(ダスト)の塊ですが、観測で得られた3色擬似カラー合成画像※2から、29Pは全体的に白い色※3をしており、核の周りには細長い尾のような構造が複数あることがわかりました。また1週間程度の短い期間に構造が広がり、薄くなっていることもわかりました。今後も観測を続けていくことで彗星のアウトバーストのメカニズムに関する新たな知見が得られるかもしれません。

※1  この彗星の正式名称は29P/Schwassmann-Wachmannです。発見者がドイツ人であることから、ここでは「シュヴァスマン・ヴァハマン」と表記しています。英語圏では、「シュワスマン・ワハマン」と発音されることも多く、そのような表記も長い間使われてきています。またこの彗星はケンタウルス族という木星-海王星間を公転する、氷天体のグループに属する天体で、その中でも彗星活動を示している天体の一つです。

※2  画像処理:ローテーショナル・グラディエント処理

※3  塵(ダスト)は、太陽光に含まれるすべての色を反射するため、このように見えます。

文責:堀内 貴史