おとめ座の銀河に現れた超新星 2021qvvをむりかぶし望遠鏡で観測

図1  おとめ座の早期型銀河NGC 4442に出現した、超新星 2021qvv(水色の矢印の先)の3色擬似カラー合成画像。撮影日: 2021年7月1日、 撮影・画像処理: 堀内 貴史、花山 秀和。画像の詳細はこちら

おとめ座の銀河NGC 4442に現れた超新星 2021qvv(図1)をむりかぶし望遠鏡で1ヶ月間観測しました。それにより典型的な超新星よりも暗く、その明るさの減少が速いことなどを突き止めました。

超新星爆発は、星が一生を終える際に起こす大爆発で、明るいものでは太陽の100億倍以上の明るさに達します。今回観測した超新星2021qvvはIa(イチエー) 型超新星と呼ばれるもので、白色矮星という高密度の天体で核反応が暴走して星全体が吹き飛ばされる現象であると考えられています。超新星 2021qvvは2021年6月23日におとめ座にある近傍の楕円銀河(※1)NGC 4442にて発見されました。

発見・分光学的な分類の報を受けて、石垣島天文台にて九州・沖縄地方最大の光学望遠鏡、105 cmむりかぶし望遠鏡による追観測を2021年6月27日から7月27日まで行いました。むりかぶし望遠鏡にはMITSuME(ミツメ)という緑・赤・近赤外の3色を同時に撮影できるカメラが搭載されており、各色で様々な天体の特徴を調べることが可能です。超新星は様々な色で観測した場合、各色で明るさの時間変化の違いが顕著な天体の一種です。この時期のおとめ座の方向などの天体は、空が暗くなる時間には西の方角の低い位置にありました。そのため観測にあまり適さない、30度以下(※2)の高度になるまでの限られた時間しか観測できませんでした。幸い晴れの日が続くことが多かったため、計14回の観測機会を得ることができました。

観測の結果、超新星 2021qvvは最大光度が13.5等級(※3)と、この距離のIa型超新星としては当初想定されていたよりも1等級程度暗く、典型的なIa型超新星に比べて急速に暗くなることがわかりました(図2)。これらの観測結果は、(1) 楕円銀河の超新星は暗いものが多い、(2) 暗い超新星はその明るさが減るのも速い、など過去の研究によって得られた傾向を反映していると考えられます。このように、一般的なものとは異なる傾向をもつ超新星をより多色でより長期間観測することで、新たな知見が得られるかもしれません。

図2  超新星 2021qvvの明るさが変化する様子(横軸:日付、縦軸:明るさ)。三角・丸・四角形のデータ点はそれぞれ緑・赤・近赤外で観測した時の明るさの変化を表している。緑・近赤外のデータ点は3色の明るさの変化を見やすくするために、1.0等級分暗い、明るいほうへそれぞれずらしている。緑・赤・マゼンタの実線は過去に観測された典型的なIa型超新星 1997bpの緑・赤・近赤外での明るさの変化を表す。この時、超新星 2021qvvと1997bpでそれぞれ赤で観測した場合に最大光度になる期間を合わせている(赤のデータ点と実線)。

超新星 2021qvvの明るさが徐々に変化する映像(赤い色のデータを使用したモノクロ動画)はこちら。文字/マークなし版の動画はこちらになります。

※1 主な銀河の形態の一つで、星々が楕円体状に分布している銀河です。楕円銀河はそのほとんどが老齢な星々で形成されています。

※2 この高度以下になると地球大気の影響が顕著になる、つまり天体の像が広がり、赤っぽく写ってしまいます。

※3  明るさが100分の1だと等級の数字が5つ大きくなります。13.5等級は人間の目で見える最も暗い6等級の1000分の1の明るさに相当します。

文責: 堀内 貴史